京都大学 大学院人間・環境学研究科/総合人間学部・(併任)大学院地球環境学堂 生物多様性保全論分野 瀬戸口浩彰研究室

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研究内容

絶滅危惧種の保全研究

私は自らの仕事のなかで「環境問題の解決に少しでも貢献すること」を大事なことと位置づけています。
これまでに、いくつもの保全研究を進めてきました。

これらの研究の特徴は2つあります。まず1つ目は、絶滅危惧種を守る上で、その減った原因を調べたりすることに関連して、「江戸時代の現場はどうだったのだろう?明治期は?昭和初期は?環境が激変した時期は?・・・」と歴史や古地理、お年寄りへの聞き取り調査などを調べることにより、総合的に絶滅危惧の背景を探ることを実行してきた点にあると思っています。そして、「これから守るためにはどうしたら良いか?」という解を得るために、例えば駅の月別乗降客数をグラフ化して考えたりします。理学の集団遺伝学解析や植物学の解析だけでは無く、いわゆる「文理融合」を実践しています。
植物学に留まらない、完全に「総合的な」研究になります。

例えば京都洛北の地に固有なキブネダイオウ(絶滅危惧IA類)を守るためには、貴船の旅館組合の方々と話し、ご自宅にある資料を見せて頂き、お年寄りに話を伺い、貴船神社の宮司さんと話し、京都府立文書資料館で資料を探し、昔の貴船川のイメージを再現していきました。貴船の皆さんの観光のお仕事の邪魔にならないよう、これらは全て、真冬の閑散期に進めました。また、叡山電鉄にご協力頂き、「貴船口駅」における月別乗降客数を提供して頂いたりしました。京都土木事務所に出かけては、昭和10年からの貴船の河床の床几の台数を調べ上げました。
このようにして、初めて、貴重な植物を守るための判断材料が集まってくるのです。
また、こうした調査の中で、地域の皆さんと懇意になり、その後の自生地植え戻しや見守りにご協力頂いたりしてきました。
詳細は下記の「河川環境管理財団」のpdfをご覧下さい。

2つ目は、研究が終わった後も継続して草取りや自生地の維持を続けることです。現場を観察し、汗をかき、体を酷使すると言うことです。草取りは「研究」とは言えませんが、絶滅危惧種が独り立ちして「メンテナンスフリー」になるまで、しっかりと責任を持つことが大切です。保全研究が危うい点は、研究業績を求める研究者の餌食になりやすい点にあります。研究が終わって「ハイ、お終い」では、保全研究をする甲斐が無いと思うのです。

ご注意:著作権侵害禁止に関する事項

河川環境管理財団のHPに明記してあるように、このpdfの著作権は助成を受けた機関・研究者に帰属します。
実は過去に無許可・無通知で、写真とデータをそのままコピペされて本に使われて出版されたことがありました。
パワーポイントなどのプレゼン用ソフトでの利用も含めて、引用にあたっては、著者(瀬戸口)と財団に、事前に了解を得て下さい。

  1. キブネダイオウに関する保全研究
    河川環境管理財団 河川美化・緑化事業 研究成果報告書
    京都府貴船川における絶滅危惧植物キブネダイオウの保全研究
    著者: 京都大学大学院人間・環境学研究科/瀬戸口浩彰
    http://www.kasen.or.jp/c_jyosei/pdf_jyosei02c/jyosei02c_111.pdf
  2. 琵琶湖に生育する海由来の植物の保護研究
    河川環境管理財団 研究成果報告書
    2012年度/助成番号:24-1215-025/
    琵琶湖湖岸に生育する海浜植物の集団遺伝構造解析と植生景観維持のための保護対策について
    著者: 京都大学大学院人間・環境学研究科/瀬戸口浩彰
    http://www3.kasen.or.jp/docs/2012/01/241215025.pdf